HOME>うつ病
うつ病
うつ病

1 うつ病とは?
心は,本質的には要素に分解できるものではなく,他人の心の評価は,科学の要求する客観性には到達できない。精神症状を記述するためには,意識,知覚,感情,意欲,思考というように,心あるいは体験をいくつかの要素(側面)に分けて評価し,各要素を再構築して,各要素を再構築することで把握している。人間の心はモザイクではなく,精神症候学には限界がある。また,精神疾患と神経疾患,一般身体疾患,心の悩み,性格の個人差には境界領域が存在し,正常,異常を二分することはできず,生理的な反応あるいは個人差から精神疾患までの間は連続体として存在する。
ゆううつだからといって,かならずしもうつ病のゆううつとは限らない。うつ病は「知•情•意」の障害と「体の症状」が生じる。
抑うつ気分を訴えるときには「落ち込んでいる」「すっきりしない」「うっとうしい」「ゆううつ」「重苦しい」などと表現される。しかし,これらの表現ではいわゆる病的な抑うつと正常範囲内のゆううつ感や悲哀感との質的な差は識別されにくい。うつ病における抑うつ気分は,生気感情の低下と表現されるように,身体感覚と密着したものであり,重症化すれば「ゆううつ」というよりも,感情がわかず,つらいだけと訴えられる(悲哀不能)。うつ病者の気分の異質性はこの悲哀不能と悲哀感の表裏一体性である(DSM-IVの○1 憂うつな気分と○2興味,喜びの減退に相当する)。
したがって,抑うつ気分が目立たない場合でも,身体的訴えや疲れやすさが前景にくることがある。
実際,身体症状がうつ病の初期症状をなすことが少なくなく,身体症状は多彩で,うつ病に特異的なものはないが,不眠,疲労や倦怠感,食欲不振,口渇,頭痛,めまい などがある。
シュナイダーは感情を快あるいは不快として直接感じられる心の状態とし,感情を感覚と結びついた快•不快(身体感情),心に感じる快•不快(心的感情)に分けているが,うつ病の場合も身体感情が前景に立つことがある(仮面うつ病)。
現在,うつ病といえばDSM-IVの大うつ病のことをさすが,身体症状が前景に立つと身体表現性障害に操作的に分類されてしまうのが問題点である。
抑うつ気分と並んで精神運動性の抑制は,抑うつ状態の中核であり,正常範囲の悲哀との鑑別点として重視される。「頭が働かない」「何をするのもおっくう」「決断できない」などと訴えられるが,抑うつ気分と比べると,他覚的にも認められやすい。一方,焦燥感はほぼ全例に認められる。
この精神運動制止と焦燥を別々のものと列記するのではなく,組み合わせると,患者は「おっくうなのにいらいらしている」であるという逆説性が存する。
このわかりやすい症状を必須項目とせず,正常範囲の悲哀反応と区別がつきにくい抑うつ気分をDSMの診断の必須とすることによって,うつ病概念の拡散につながっている可能性がある。
さらにうつ状態が悪化すると,妄想に発展することもある。悲観的,絶望的,虚無的なものが多い。「取り返しのつかない過ちを犯した」という妄想(罪業妄想),「病気が重く,生きていらない」(心気妄想),「お金がないので生活できない」(貧困妄想)が生じる。
一方,「自分がいなくなって迷惑をかけている」「取り返しのつかないことした」という訴えには,世界の罪を一身のしょいこみ,自分がいないとだめになるというという誇大性にぶつかることもある(微少と誇大の逆説性)。
2 うつ病は大変ポピュラーな病気である
うつ病の生涯有病率は高く,女性10〜25%,男性でも5〜12%と言われています。また,現時点有病率は女性で5〜9%,男性は2〜3%である。単に頻度が高いだけでなく,それがもたらす主観的苦悩や社会的機能障害も大きい。
3 現在のうつ病
私が研修医の頃は,はじめに中年のうつ病患者をみるのがいいと先輩に言われた。彼らの人生において,うつ病は特別な出来事であり,言い換えると非日常的な出来事であり,
薬物療法と休養により一旦回復し現実社会に戻るとすみやかに,もとの役割同一性に戻り,社会に復帰していった。自分が患者さんの回復に役立ったという実感をもつことができた。
現在,日本のうつ病などの気分障害疾患が90万人に到達し,外来を訪れる患者さんも爆発的に増えた。
上述のような古典的なうつ病から私たち心療内科,精神科医を悩ます多様な病態も出現してきている。
松浪が提唱する現代型うつ病はその典型である。従来型のうつ病と比べて早期に受診して,病型が不全であるとか,制止や抑制が選択的であるとか,従来のうつ病者が無趣味であったのに,意外に趣味を持っていたり,かつてのうつ病のような他者配慮性がなくどちらというと自己中心的であったり,職場恐怖的な心性が特徴の一つであるとされる。
一体化傾向がない,職場で几帳面さを出さない,自分のペースを乱されるのを嫌う。罪悪感が少ない。また,他罰傾向があり,しがみつかない特徴がある。
しかし,古典的なメランコリー型うつ病と様相が異なるが現代型うつ病は「軽症内因性うつ病」である。軽症ゆえに,病気に押し流されない,病気に完全に圧倒されないので自分が陥った状態について認識がある程度できていて心理的解釈をする。さらに対処行動を活発にするので,注意しなくては非内因性の病態と区別できないこともある。
また,アキスカルが1980年前後に単極型のうつ病にも双極性の要素が含まれていると提唱したが,逆説的に鬱の重しがないときに軽躁状態が出現しやすくなり,soft-bipolarが以前より多くなってきているように思われる。現代型うつ病は青年期から中年期の心性である。従来のメランコリー型うつ病は中年期の心性であった。青年期の延長現象も一段も二段も増大している。
また軽症だから治りやすいわけではなく,軽症ゆえに発病したときの状況をよく覚えていて,なかなか職場に復帰できないことも少なくない。
4 うつ病の診断(うつ病チェック)
米国精神医学会(APA)のDSM-IV診断基準やICD-10によって診断される
最近2週間のあたなにあてはめるものに○をつけなさい
( )ほとんど毎日,一日中ひどくゆううつを感じる
( )ほとんど毎日,一日中何をやっても,つまらないし,よろこびというものを感じ ない
↓一つでも○がついたら
いつも違って最近2週間のほとんど毎日,あなたに認められるもの○をつけて下さい。
( )ひどく食欲がない。または,食欲がありすぎる
( )ひどく眠れない。 または,眠すぎる
( )イライラして仕方がない。また動きがひどく低下している
( )「自分はどうしようなない人間だ」「悪い人間だ」と自分を責める
( )考えが進まず,集中力,決断力が落ちた状態が続く
( )自殺を考える
↓4つ以上に○がついた場合
以上の症状のために,ひどく苦しみ,仕事や家事,家業に支障がでていますか
↓でていれば
大うつ病の可能性があります。
(このようにDSMの診断は操作的なので,容易に抑うつ体験反応が混入します。うつ病概念の拡散の一因はこのような診断方法にあります。
5 気分障害
いくかのサブタイプがありますが,メランコリー型うつ病,気分変調,非定型うつ病、双極性障害を取り上げます。
メラコリー型うつ病
(1)はっきりと区別できる性質の抑うつ気分
(2)抑うつは決まって朝に悪化する
(3)早朝覚醒(通常の起床時間より2時間早い)
(4)著しい運動制止または焦燥
(5)あきらかな食欲不振または体重減少
(6)過度または不適切な在責感
気分変調症
抑うつ気分がほとんど1日存在し,それがない日よりもある日の方が多く,それが少なくとも2年続いている。
抑うつの間,以下の(またはそれ以上)症状が存在すること
(1)食欲減退,または過食
(2)不眠,または過眠
(3)気力の低下,または疲労
(4)自尊の低下
(5)集中力低下,またが決断困難
(6)絶望感
薬物療法で抑うつ気分を和らげ,考え方や生活環境の改善に根気よく取り込む
非定型うつ病
うつ病らしくないうつ病です。
気分の反応性(すなわち,現実のまたは可能性のある楽しい出来事に反応して気分がよくなる)
(1)著明な体重増加または食欲の増加
(2)過眠
(3)鉛様な麻痺(すなわち,手や足の重い,鉛の様な感覚)
(4)長期にわたる,対人関係の拒絶に敏感であること
周囲の人の協力のもと,患者さん自身も生活リズムを立て直すことが重要である。
双極性障害
抑うつ気分と壮快な気分が循環することがある。うつから始まると診断がつきにくい。双極性障害と診断された場合,気分安定薬を使用する。過去に躁病相が
あれば鑑別は容易であるが,将来躁病相が出現して双極性うつ病になるか否かの予測は困難である。ただ,躁とうつを繰り返す場合うつ病相の割合が高いのが特徴である。躁状態とうまくつきあっていくのが大切です。

お問い合わせ
![]()
ご質問等お気軽にご相談下さい。



