PMDD・PMSとは
PMDDとは⽉経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder)、PMS とは⽉経前症候群 (Premenstrual Syndrome)のことを⾔います。つまり、⽉経前の2週間前から⽉経が始まる前、始 まった直後までの期間にみられる、精神的・⾝体的に不快な症状があらわれる病気です。多くの女性はPMDD・PMSに関わる何らかの症状があり強い症状がみられる人も少なくありません。
PMDDとは⽉経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder)、PMS とは⽉経前症候群 (Premenstrual Syndrome)のことを⾔います。つまり、⽉経前の2週間前から⽉経が始まる前、始 まった直後までの期間にみられる、精神的・⾝体的に不快な症状があらわれる病気です。多くの女性はPMDD・PMSに関わる何らかの症状があり強い症状がみられる人も少なくありません。
DSM―IV(2001年)でPMDDという名称が登場しFDA(米国食品医薬品局)が1999年にプロザック(セロトニン取り込み阻害薬 SSRI)をPMDD治療薬として承認しました。DSM-5(米国精神医学会 2013年)において、うつ病/大うつ病性障害、持続性抑うつ障害(気分変調症)などと並んで独立した疾患として抑うつ障害群のカテゴリーに分類されました。生殖可能な女性の1.5~5.8%にみられるとの報告があり珍しいものではありません。月経前に抑うつが生じて月経が始まると速やかに消失しますが、月経の前毎に重い抑うつが生じるため日常生活に支障を来たします。その抑うつは過食、過眠や些細なことでイライラ、怒るなど⾮定型うつの特徴があります。そのような症状のため仕事の能率、職場の人間関係などに支障が生じ仕事を辞めざるを得なくなったり、子供に手をあげたり、身近な人やパートナーと喧嘩になり深刻な場合は離婚に至る場合もあります。
下記項目に5つ以上当てはまる場合は、PMDDの可能性があります。
PMDDはDSM-5 の診断基準に沿って診断されます。抑うつが月経の⼀週間から10日前後から生じて月経が始まって2~3⽇後には消失します。
月経が始まっても精神症状が続くようであれば、他の精神疾患の月経前増悪の可能性があります。
PMS、PMDDは月経周期に関連して症状が発現するという点は共通ですが、PMDDはPMSより精神症状が強くDSM-5の診断基準を満たすかどうかで判断します。PMDDは誰でもかかる可能性がある疾患ですが「産後うつ」の既往がある人はかかりやすいと言われています。
18才頃より、月経の前にはイライラすることが多かったが22才で就職をした頃より月経前のいらいら感が強くなった。イライラ感は、月経の10日前頃よりはじまり月経の前日にピークに達する。また、この時期には夫のちょっとした一言に対しても口論になり、ヒステリックにあたったり子供にもあたりちらし、あとになって子供が将来、グレないか心配になってしまう。
派遣先でも、仕事の能率が落ち、ミスを連発する。自制がきかなくなり、上司や同僚と口論になる。さらには、夜は十分に寝ているのにもかかわらず、昼間も眠く、極端にイライラするせいか過食になる。また、月経の前には、頭痛がひどくなり、乳房がはり、全身が膨らんでいる感じがする。しかし、これらの症状は、月経がはじまった次の日には、ほとんど消えている。
まずは、抗うつ薬であるSSRIを処方し、月経前の2週間だけ飲むように指示をしました。また、この期間は自分自身がPMDDであるという自覚を持って注意して過ごすことで、対人摩擦をある程度防ぐことができるようになりました。
PMDDの治療法は生物学的治療が中心になります。特に安全性と有効性からSSRIがもっとも推奨されます。SSRI はうつ病に対しては服用から2週間~4週間で徐々に効果が出てきますがPMDDの場合、速やかに効果が生じます。そのため黄体期のみ服用する間欠療法が可能です。また症状があらわれる月経前の2週間は、できるだけ対人摩擦が起こらないように気を付けるなどの心理教育も有効です。ご自身がPMDDであることや、どういった症状があらわれるかを自覚するだけでも過ごし方は変わってきます。その他、適度な運動や食事療法も効果的です。食事では大豆イソフラボン、炭水化物を多く含む飲料の摂取が推奨されています。
18才頃より、月経の4~5日前から、イライラ感を感じるようになった。月経の前日にピークに達する。この時期には甘いものが食べたくなって過食になることもある。これらの症状は、月経が始まると、すべて消えてしまう。月経の前には、交際中の恋人に対してはイライラをぶつけることがあるが、上司や同僚には自制がきくので、仕事上ではとくに問題はない。
AさんはPMSと診断されました。漢方薬を処方し、カルシウムやマグネシウム、ビタミンB6などの栄養素を摂るようにアドバイスをしました。仕事で帰りが遅いためなかなか料理に気を遣う時間がないということで、サプリメントでの補給をお勧めしました。
3か月ほどの通院の後、症状がかなり改善され自制がきくようになり、甘いものの過食や恋人に対してイライラをぶつけることはほとんどなくなったそうです。薬の処方は止めましたが、また症状が再発しないようにサプリメントの摂取は継続するようにお伝えしました。
PMSは、有酸素運動(エアロビクス)、食生活の改善、カルシウムやマグネシウム、ビタミンB6などのサプリメントの補給で改善することも多いようです。このようなセルフコントロールによっても、あまり効果がない場合は、漢方治療を考慮してみてはいかがでしょうか。
PMSなど婦人科の病態は、漢方治療が最も得意とする分野といえます。漢方の観点からは、PMS の病態は唹血(オケツ)と考えられます。唹血(オケツ)とは血のめぐりが悪い状態です。PMS の原因ははっきりとはわかっていませんが、ホルモンの影響が考えられます。排卵後に、プロゲステロンやエストロゲンという女性ホルモンが急激に増えた後に減ります。この変 動のために自律神経のバランスが崩れ、PMSがおこると考えられます。