統合失調症とLAI(エル・エイ・アイ:持続性注射薬)
院長ブログ
統合失調症は、発症頻度の高さ(1%)、病状の特異性などからも精神医学の臨床において重要な占めている病気です。
妄想、幻覚、興奮、意欲がわかないなどの症状がみられます。統合失調症の治療では、症状の安定や再発防止のために薬物療法は欠かせません。毎日、服薬することに煩わしさを感じたり、つい飲み忘れたり、きちんと服用することはなかなか大変です。
再発を繰り返すと 精神機能や社会的な機能が低下して、今までできていたことができなくなる、薬が効きにくくなって回復に時間がかかる、多くの方が再入院になります。
再発予防の手段の一つににLAI(持続性注射剤)があります。
メリットとしては
●薬を確実に身体に入れることができる
●再発や入院の心配が減る
●症状が安定する
●飲み忘れの心配がなくなる
●服薬の煩わしさが減る
●薬を飲む時間を気にしないで活動できる
●人目を気にしないで済む
逆にデメリットは
●注射薬のため痛みを伴う
●副作用が出ると、長く続いてしまう
●効果を発現するまでに時間がかかる
などです。
最近の統合失調症のお薬は以前のものより副作用が少なく、統合失調症の目標は症状を安定させるばかりでなく、さらに「自分らしい生活を取り戻して、生きがいや将来の夢や希望に向けて一歩を踏み出すこと(リカバリーと言います)にあると言われるようになってきました。
リカバリーを目指すことに欠かせないのは再発を予防することです。
持続性注射薬(デポ剤)にどんなことが期待できるかとの質問に1日何回も薬を飲むわずらわしさが圧倒的に多かったのに対し、実際に患者さんが感じる持続性注射剤のメリットは
となります。
図1はLAIのメリット「薬を飲む煩わしさがなくなる」と考えていたのが、予想もしない良いこと(症状が安定して再発や症状の悪化が少なくなった) 飲み薬より副作用が少なくなった。飲み忘れを気にせずに安心して仕事や学校、旅行に行けることなど)が多かったという精神医療ユーザーのアンケートです。
図2はLAIを打つと血中の濃度が安定し、結果として副作用が出たり、症状が出たりしにくいことを表したものです。
もちろんお薬だけでなくデイケアに参加したり、体力をつけたりすることも大事です。ヨーロッパなどでは再入院をできるだけ少なくするためにLAIが主流になっています。日本ではその取り組みが遅れています(米国も徐々に増えています)。